豊島 ミホ / 双葉社(2006/07)
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<豊島ミホお得意の普通で地味な若者を熱く描いている青春小説の決定版。>
注目している若手作家豊島ミホさんの待望の書き下ろし新刊。
舞台は雪の降り積もる地方の街。
主人公は中学3年生のシンとアヤコ。
第1章では中学校卒業の日に10年後の再会の約束をするまでが描かれている。
第2章以降は、その後別々の道を歩み始めた2人が、10年後に再会する予定の日の2カ月前からの心の動きが描かれる。
帯に“切なさにキュッとなる恋愛小説”とあるが、私はこの作品は恋愛小説の要素は極めて薄いと思う。
なぜなら別に恋人だったとかじゃなく、好きだと言い合ったわけでもなくただ単に、お互いが気になる存在だったのだから。
どちらかといえば青春小説のジャンルに分類すべきだと思う。
2人がお互いに持ち続けた10年間の想い、は青春時代しか味わうことが出来ないのである。
逆に言えば、好きなのに好きだと言えないほどシャイで純真な登場人物が眩しく感じるぐらいである。
本作は他の作家の恋愛小説のように、人を好きになる気持ちの大切さに力点を置いて描いたものではない。
それよりも自分のやりたいことや夢に向かってどのように生きているか。
そう、豊島ミホは読者と共に人生を模索できる作家なのである。