2004
11.30
Tue
『明日の記憶』 荻原浩 (光文社)
post time: 13:59, category: 荻原浩, author: トラキチ
荻原 浩 / 光文社(2004/10/20)
Amazonランキング:7,120位
Amazonおすすめ度:
この本を忘れたくない
傑作!!!
生きることを問われる小説
本作は、主人公が“若年性アルツハイマー病”に罹って段々悪化していく過程を描いたものである。
内容からも推測できる通り、いつもの荻原さん特有のハチャメチャなユーモアが完全に抑制されている。
そこに氏の並々ならぬ本作への“熱き想い”を感じ取られた方も多いのであろう。
本作を通して読者はアルツハイマー病という病気の恐さを否応なしに知ることが出来る。
荻原さんは本文中の日記において病気の進行度を如実に描写した。
始めは誤植かな思われた方もいらっしゃることだと思う。
一番胸に打たれたのはやはりアルツハイマー病に罹っているとわかりつつも、愛娘の結婚式まではなんとか会社に残りたいと言う愛情である。
ただ、この作品ほど周りに患っている人がいるか否かによって感じ方が違う作品はないのだと思う。
幸い私自身身近にいないので自分の幸せを身に沁みて感じ取ることが出来た。
しかし危ないのは私自身である。
本作における様々な兆候が自分自身にも見出すことができるのであるが、果たして私だけであろうか?
自分には関係ない思えるのはせいぜい20代ぐらいまでで、やはり30代に突入すると物忘れも本当に激しくなる。
年々忘れっぽくなっている自分を自覚されてる方も多いであろう。
しかし敢えて周りの人々=家族の大切さを謳った作品であることを強調したいなと思う。
「もういいよ、俺のことは。おまえはまだ若いんだから、俺がいなくなってからのことを考えろ」
「なにそれ?安っぽいドラマみたいなことを言わないで。言われる身にもなってよ。こっちには最終回なんかないんだから」
枝美子が声をあげて泣くのを聞いたのは、いつ以来だろう。たとえ病気でなくても覚えていないほど遠い昔のはずだ。
すなわち、本作において1番大切な点は病気の恐さを身を持って知ってほしいことではない。
それは2番目に大切な点だと思う。
いたわり合い慈しみ合うことのできる人がいることの喜びだと思う。
荻原さんのシナリオは寸分の狂いもなくラストへと導かれて行く。
ラストシーンがいつまでも脳裡に焼き付き、心に小春日和をもたらせてくれた。
私は主人公に代わって、奥さんに強く感謝したい気持ちで本を閉じたのであるがみなさんはどうであろうか・・・
病気は深刻であるが、“主人公は幸せものだ”と声を大にして叫びたいなと思う。
評価8点
荻原浩さん最近はまってます!
私も本のレビューでブログを開設しています。
まだまだつたない文章で、読みにくいところもあると思いますが、
遊びに来てください。
リンクさせていただいてもよろしいでしょうか?
この作品映画化決定みたいですね。
夫婦で観に行ける映画だと思います。
>ななさん、こんばんは♪
荻原さんの最新刊読んでますが、ますます作風が広がったような気がします。
コンプリートしたいですね(*^_^*)
本当に30代になると物忘れが激しくなり、ドキドキしながら読みました。
「自分がなったら」って考えるのと一緒に、「もし夫がなったら…」って考えさせられました。
最後のシーンは本当に素敵でしたね。
tbさせていただきました。
この本は、後になってからじんわりとくる本ですね。
忘れられない一冊となりました。
本当に世の中にはいろんな方がいらっしゃるので、こうしてネットでいろんなことをフランクに語り合えるのは幸せなのかもしれませんね。
この作品に関しては荻原さんの他作との比較で、かなり違ったジャンルとなってるので余計に注目を浴びたと言う側面はあると思います。
実際、ごく身の回りにアルツハイマー病の人がいない私にとっては、多少なりとも予備知識となったことも事実ですし、家族の大切さが身に沁みたというのも事実です。
読書はその時の精神状態によっても感じ方が違ってくると思います。
たまさんのお気持ちはよくわかります。
この場でまた読書ではつかめないものを勉強させていただいたような気もちです。
いつでも遊びに来てくださいね。
あと、操作ミスの二重投稿、削除してくださってありがとうございました(涙)
私自身、正直書き込みすることを、迷って書き込んだので、
そして、失礼な投稿をしたと判断されても仕方がない(実際、失礼なのかもしれません)内容でしたので、
寛容に受け止めてくださったトラキチさんに、感謝です。
読書ですから、現実とは、ちがう。
そのとおりです。
…でも、一抹のかなしさと、社会への危機感は、残ったー…
なぜなら、実感したから。
自らの悲しみは二の次だと堪えながら、患者の苦悩を何よりもだいじに、未来のない病気との闘いに、できるかぎり寄り添い続ける沢山のひとたちが、現実に生きています。
でもそれはマイナーなんだなって、思った。
そんな社会が、さみしいなって、この本が人気を得る様子をみて、思ってしまった。
偏っているかもしれないのですが…。
…ここで、こういう気持ちを書かせていただいたこと、
感謝しています。
本当にありがとうございます。
追伸;
私は、自ら望んで、看病や介護を人生の中に組み込んできた、数少ない人間です。
なので、介護への無理解への腹立ちから、本書を好きになれなかったなったわけではなく、
一日最低1冊の読書を、中学にあがってから今までずっと続けて来た
そういう経験からの、この本への感想であったことだけは、
どうかご理解ください。
コメントありがとうございます。
たまさんのように、身近でご苦労されてる方の評価って本当に分かれるのでしょうね。
私は感想にも書いてるように、主題は“家族の大切さ”だと思っております。
ただ、本人に伝えるのはどうかなと思います。
というのは、今さら書き直しも出来ないであろうし、作家ご自身もそれなりに努力&苦労して書き上げたものだと推測されるからです。
たまさんのように買われて期待され読んだけど、物足りなかったというお気持ちは本当によくわかります。
世の中には買ってもないのに本について酷評されてる方がいます。
“そんな方に限って自分が応援している作家や作品に対して他人が酷評すれば立腹するのだなと思って呆れております。”
はっきり言って“言語道断”だと思っております。
ネットは居酒屋で知人と話をしているのではありません。
十分、本人や熱烈なその作家のファンの方が読むことが可能です。
私はスタンス的には、やはり生活をかけてプロの作家は書いてるのですから、面白くなかってもいい点を見つけてそこを見出したいなと思います。
小説はノンフィクションじゃありません。
たかが“フィクション”だと思うことも肝要かなと思います。
これからも、いつでもご感想を聞かせてくださいね。
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『明日の記憶』私も読了しました。
…私の感想は、世間の大半の方とは少し違っています。
「買うまでもなかった」と感じてしまいました。
物語としては読むに耐える構成ですし、特にラストシーンはなんともいえない感動を与えてくれたと思うのです。でも、それでも私はこの本にそれほど心動かされなかったのです。
理由は、この小説のもう一つの柱である、主人公=アルツハイマー病者本人の苦悩の描写が、あまりに物足りなく思えたからです。リアリズムを感じない…。
フィクションだからというのはエクスキューズにならない。小説のもつ力って、こんなもんじゃない。そう、感じました。
作者本人にも、そう伝えてみようかと思ってみたりしています。
かつて、永きにわたって脳が冒される病気(脳腫瘍)と闘病した父を看取り、今は祖父母(祖母が老年性アルツハイマー)を、主介護者としてバックアップする者としての率直な感想です。
ネガティブな感想を残すこと、どうかお許しください。
また、ちょくちょく立ち寄らせてくださいますか?
『明日の記憶』読まれたのですね。
この作品を読まれたあとに荻原さんの他作を読まれたら本当に驚かれることでしょう(笑)
身近にいる人の大切さを再認識させていただいた近年稀に見る秀作と言えそうですね。
読後、どうして「ふわり」としたものを感じるのだろうと思っていましたが、トラキチさんのレヴューの「いたわり合い慈しみ合うことのできる人がいることの喜び」のところを拝見して納得です。見ることのできない心の方ではなく、現実に目の前に相手がいることなのですね。ラスト、素敵な作品でした。
コメントありがとうございあます。
本当に素晴らしい作品ですよね。
山本周五郎賞の候補にも上がっています。
ひょっとして取れるんじゃないかなと思っております。
荻原さんの作品は4〜5冊読んでますが、一線を画する作品だと言えそうです。
身につまされるという意味あいにおいては本当に“読者の記憶に残る1冊”だと言えそうですね。
ご無沙汰しています。Skeltia_vergberです。TB送らせていただきました。
読んだ直後にウルウルしながら拙い文章書いてしましました。
これからもよろしくお願いします。私はあんまり読書のペース早くないので。
コメントありがとうございます。
主人公夫婦の年齢になってこんなにいたわり合えたら幸せでしょうね。
いつまでも恋をしている気持ちを忘れたくないですね。
マイブログリストに登録させていただきました。
これからもよろしくお願いします。
本当にラストのシーンはきれいな情景でしたね。
もう一度恋が始まりそうな予感が素敵でした。
お返事遅れました。
本当にアルツハイマーかもしれません。
実は9点のつもりでいましたが、もうすぐショートさんも読まれる予定の『幸福な食卓』が素晴らしすぎたので2点差をつけました(笑)
『明日の記憶』は幅広く読んでほしい作品だと思っております。
>いたわりあい慈しみあう事のできる相手がいる事の喜び
ほんと、生きてて一番大切なのはそれかもしれません。
それに、なかなか気付けないでいたりしてね。
ん?でも8点なんですね。