2005
03.05
Sat
『だいこん』 山本一力 (光文社)
post time: 13:43, category: 新着レビュー(時代小説), author: トラキチ
だいこん |
| 山本一力著出版社 光文社発売日 2005.01.20価格 ¥ 1,890(¥ 1,800)ISBN 4334924492 |
気風が良くて器量好し。みんなから愛されるつばきが一膳飯屋「だいこん」を舞台に繰り広げる人情たっぷりの細腕繁盛記。 [bk1の内容紹介] bk1で詳しく見る |
時代は江戸中期、天明・寛政の頃。
江戸浅草で一膳飯屋“だいこん”を営むつばき一家の物語である。
日頃、心暖まる小説に飢えている人は本作を手に取ればいい。
明日からは“もう少し頑張ってみよう!”と読者に必ず思わせてくれるところに直木賞作家の底力を垣間見た気がする。
なんと言ってもヒロインつばきのキャラが素晴らしい。
男性読者が読めば、必ず惚れ込む事間違いなし。
過去を遡れば、たとえば藤沢周平さんの
『蝉しぐれ』の牧文四郎がとっても印象的であるが、本作のつばきも文四郎に負けず劣らず読者を引き付ける魅力的な人物だ。
いわば、読者が主人公に惚れる作品の典型的な例として語り継がれる作品だと言えそうだ。
とにかくヒロインつばきの“芯の強さ”を読者は見習わなければならない。
ただ単に、ひとつのサクセスストーリーとして読むのもいいのだろうが、やはりそのひたむきな性格と卓越した商売に対する才覚を実感しながら読むと、“読書って楽しくて有意義なものなんだな”と肌で感じることが出来る作品である。
もちろん、私たちが生きている現代は、この作品のように簡単には行かない。
しかし、少し物ごとに対して後ろ向きに考えがちな人(私も含めて)が手に取ったら、必ず主人公のつばきが読者の背中を押してくれるような気がするのである。
なぜなら、彼女のひたむきさは、現代小説の作中の人物では実感できないレベルだから・・・
少し物足りなく感じた点は、ヒロインつばきの恋模様の描写が少ない点であろうか・・・
山本さんはその宿題を続編にて応えてくれるであろうと切望したく思う。
少し余談となるが、タイトルともなっている“だいこん”。
安くて美味しい庶民的な食べ物の代表である。
このネーミングは、ヒロインつばきのイメージだけでなく、家族の情愛を描かせたら右に出るもののいない作者・山本さんの人柄をも彷彿させられたのは私だけであろうか?
“だいこん”を食べるように、お気軽に手にとって欲しい一冊である。
評価9点 オススメ
この作品は私が主催している第3回新刊グランプリ!にエントリーしております。
本作を読まれた方、是非お気軽にご投票いただけたら嬉しく思います。(投票期間2005年8月31日迄)
そうですよねぇ。仕事一筋でつばきさんの人生が終わっちゃったらつまんないですよ。
いい人を見つけて、自分の娘も立派に育て上げるつばきさんを見たいもんです。
一力さん、いいよね。
乙川さんの作風が少し暗めなんで力強い一力さんの方が今はいいかな。
結構、多作な人なんで1作1作楽しみたいと思います。
文庫化も先月二冊ほどされてたような気がします。
機会があれば直木賞受賞作『あかね空』を是非どうぞ。
ブログのデザイン変えられましたね!
とても素敵です。
「だいこん」で山本さんの作品をはじめて知りました。
忘れられない作品となりそうです。
拙い私のブログに遊びに来ていただきましてありがとうございます。
一力さん、絶好調みたいです。
年末から立て続けに出てますね。
来月も出るみたいです。
少しづつ読んでコンプリートしたく思います。
『だいこん』も是非続編書いて欲しいですね。
よろしければ、新刊グランプリ!へご採点ください。
http://vote2.ziyu.net/html/grandpri.html
こちらさまの「だいこん」のblogを拝見して、読んでみました。
細腕繁盛記という話はさほど珍しくもないし、山本一力という著者名も聞いたことがなかったのですが、すごく面白かったです。
読書家たちのblogを拝見して、こうして今まで知らなかった著者や作品を知ることが出来るのは、本当に嬉しいことですねー。
今度は「FAKE」を読んでみようと思っています。