2005
04.17
Sun
<オススメ>『ナラタージュ』 島本理生 (角川書店)
post time: 22:08, category: 島本理生, author: トラキチ
島本 理生 / 角川書店(2005/02/28)
Amazonランキング:8,786位
Amazonおすすめ度:
作者の成長を感じる丁寧な作品
ややネガティブな感想です
どうしてだかわかりません。
『あなたはいつもそうやって自分が関われば相手が傷つくとか幸せにできないとか、そんなことばかり言って、結局、自分が一番可愛いだけじゃないですか。なにかを得るためにはなにかを切り捨てなきゃいけない、そんなの当然で、あなただけじゃない、みんなそうやって苦しんだり悩んだりしてるのに。それなのに変わることを怖がって、離れていてもあなたのことを想っている人間に気付きもしない。どれだけ一人で生きてるつもりなの?あなたはまだ奥さんを愛しているんでしょう。私を苦しめているものがあるとしたら、それはあなたがいつまで経っても同じ場所から出ようとしないことです』
前作
『生まれる森』が芥川賞候補に上がった時、残念ながら他の若い同世代作家(綿矢さんと金原さん)が受賞された。
選考委員に先見の明があったのかどうかはここでは語りたくないが、自分の作品スタイルを若くして構築されている島本さんの実力を深く認識された読書好きも多かったはずである。
私も“5年後10年後どんな作品を書いているのか?”と興味を抱いたのであるが、なんと1年後に本作で若手作家から実力派作家いや“純愛恋愛小説の第一人者へと大変身を遂げた”と言っても過言ではないような大作を上梓してくれたのである。
本作は芥川賞の枚数を超越して果敢に島本さんが挑戦し見事に描き切った“恋愛小説の王道作品”だと言えそうだ。
主人公の泉は20歳の女子大生。
物語は高校時代の演劇部の顧問である、葉山先生からの後輩たちの卒業公演に参加してくれないかという電話で始まる。
こうして2人の再会は始まったのである・・・
自分の気持ちに素直になるってむずかしい。
もしこの作品を読まれてたとえばあざといとかつまらないと感じ取った人がいれば、その方は“純愛小説が根本的に合わない人”か“物事を斜に構えて考えている人”か“一生ひとりの人を現在も愛し続けることが出来ている幸せな人”このいずれかであろうと思ったりする。
主人公と同年代の方が読まれたらことさらに強く共感出来るはずだ。
同年代で現在恋愛をしていない人がいれば、こんな素敵な恋愛をしてみたいと思うことであろう。
主人公以上の年代の方が読まれたら、懐かしい自分の過去を想い起こしたり、あるいは今の自分のそばにいる人をないがしろにしていないかを考え直す絶好の機会となりうる恰好の小説だと言えそうだ。
男性読者が読まれたら、もし人生をやり直せるなら、主人公のような子から愛されたいと思われた方も多いであろう。
とりわけ、“ラストの清々しさ”と作中の“痛ましい三角関係”が読者の心に永遠に残るのである。
島本理生21歳。主人公と同年代の本当に人生において多感な時期を生きている。
若さが最大の武器である点は明らかである。
なぜなら彼女の人生も小説も“現在進行形”であるからだ。
たとえば40歳ぐらいの作家が20歳前後の主人公を描いた場合と比較してほしい。
はたして本作のようにリアルな恋の痛々しさを描写出来るであろうか?
答えは本作を読み終えた方なら誰でもわかるであろう。
若さゆえの特権である、傷つけ傷つきながら成長できる。
それが人生においてきっとバネとなるからだ。
本作の登場人物は総じて“不器用”な人が多い。
恋愛をしている時って、あなたも自分が不器用だと感じませんでしたか?
島本理生は読者にそう問いかけているように感じた・・・
読み取り方によれば、葉山がずるいと思って読まれた方も多いんじゃないかな・・・
恋愛小説は読者のその時の状態(年齢・性別・恋人の有無・独身か既婚かなど)によって受け止め方が違ってくるのは間違いないところである。
果たして人は“一生一人の人を愛せないのだろうか?”
私的には葉山と泉、お互いにお互いを大事に出来、成長できたと捉えている。
本作は恋人・夫婦間で回し読みして熱く切なく語り合って欲しい一冊である。
私にとっては恋をすることの素晴らしさを教えてくれた、心に突き刺さる1冊であることを吐露したく思う。
追記も是非お読み下さい。
評価9点 オススメ
この作品は私が主催している第3回新刊グランプリ!にエントリーしております。
本作を読まれた方、是非お気軽にご投票いただけたら嬉しく思います。(投票期間2005年8月31日迄)
ネットでこの本を知りました。
内容もおもしろそうですし、表紙もとても素敵です♪
私、教師と生徒の恋愛や不倫(男性が既婚者で
女性が独身)などそういう禁断の恋愛が好きなんです。
今、すごい読みたくなっちゃいました。
それは恋人になって初めて彼氏の部屋に泊まるっていう日の晩御飯に二人で餃子作って食べるのかなあ?ってこと。その後の展開を考えるとまず二十歳位の子ならまずしない行動じゃないかと。こういう所が島本さんの作品でいつも気になってしまうのですが。
そうですね、どんな状態の時に読んでも共感したい作品ですよね。
多少の感じ方の違いはあってもそれは読者の変化だと思います。
若さを武器として書いた作品って訴えるものが大きいですよね。
こんばんは!
TBありがとうございました。
再読しても、胸を打たれました。
また時間を置いて読み返すと、違った感想になるかもしれませんね。
自分の置かれた状況で、共感できるポイントが変化する、そんなことを考えると楽しみでもあります。
共感できる心は、できれば失いたくないなぁと思います
お返事遅くなりました。
島本さん、1作ごとに成長しております。
是非他作もお読みくださいね。
これからもよろしくお願いします。
引用されている台詞は私もとても印象深く重く
うけとりました。
私はblogであれこれ文句つけてしまいましたが
やはりかなり熱中して読みました。
『ナラタージュ』読まれたのですね。
年甲斐もなく、とっても好きな作品です。
追記の方もTBさせていただきました。
最新作『一千一秒の日々』も是非手にとって欲しいなと思っております。
角田さんの『対岸の彼女』と本作はコメント&TBが本当に多いのです。
裏返せば、かなりオススメで力を入れたとも言えそうですね(笑)
いつまでも切なく思う気持ち、せめて心の隅にでも置いておきたいものですね。
これは、思い切りツボにはまって、揺さぶられました。
学生時代のことを思いかえしている方も多いようで、
恋愛って、数え切れないくらいのバリエーションがあるのに、
心の琴線に触れる部分というのは、
案外シンプルなのかもしれないとふと思いました。
それをこれだけ上手く描き出してしまう島本さん、すごい!
島本さんはじっくり一冊一冊書き上げていってほしい作家だと思っております。
本当に学生時代に戻った気にさせられますね(笑)
マイレコ、お暇なときにまたお願いいたします。
TB&コメントありがとうございました。
確かに若返りますね〜、思い出しますもん自分の恋愛の記憶とか(笑)
マイレコへの参加承認もありがとうございました。ぼちぼちエントリさせていただきます。
今後ともよろしくお願いします。
TBありがとうございます。
私の方も、少し追記してTBさせていただきました。
これからもよろしくお願いします。
Trackback をいただいたのを機会に、『ナラタージュ』の泉と葉山先生の関係をもう一度考え直し、記事を書きました。当方から Trackback させていただきました。
コメントありがとうございます。
この作品は作者と年齢が近ければ近いほど共感出来ると思います。
惜しくも山本周五郎賞は逃しましたが、次はどんな恋愛小説を上梓されるのか本当に目が離せない存在となりました。
他の作品も是非手に取ってくださいね。
「ナラタージュ」すごく好きなんです。
わたしにはまだまだ語彙や文章力が足りなくて、
どう良かったとか、ここがすばらしいとか、
上手く書けないのがもどかしいのですが・・・^^;
でも、とても素敵な本でした。
彼女の作品、もっと読んでみたいと思ってます☆
コメント&TBありがとうございます。
読書量の方は、もっと凄い方がたくさんいますよ(笑)
でもフルタイム働いている点を考慮すれば多いほうかな(爆)
『ナラタージュ』同僚に貸されるのですね。
とっても良いことだと思います。
願わくば、これって山本周五郎賞受賞したよ!って言えたらね。
明日(17日)発表です。
当ブログ、稚拙な感想ですが少しでも役に立てればと思っております。
今後ともご贔屓くださいね。
トラキチさん、それにしてもすごい読書量ですね。
これから本を読んだ後は、「ここでは何て書かれてるかなー」って遊びに来ます。
それと、僕はどうやら主人公に感情移入するタイプらしく、「ナラタージュ」については、どっぷりはまるって感じではありませんでした。
でも作品自体はとても切なくて、ストレートないい小説だったと思います。
明日会社の同僚の女の子に貸すことになっているので、その感想も楽しみです。
コメントありがとうございました。
人の顔が違うように、読書の受け取り方感じ方も違って当たり前ですよね。
少しでも共通した感じ方が出来たら嬉しいなと思いブログを運営しておりますが(笑)
inashouさんのレビューはなかなか個性的で素敵だと思います。
感じ取ったことそのままを上手く文章にするってむずかしいですよね。
これからもよろしくお願いします。
TBはたまに上手く行かない時ありますよね。
そこで再度挑戦して2回送ってたりすることもあって(苦笑)。
『ナラタージュ』は若い女性の方には本当に手にとって欲しいなと思います。
こういう作品を読むと、たとえば恋愛中の時に相手に対する思いやり度が増すような気がします。
次作いつ出るのだろう(笑)
待ち遠しいですね。
トラキチさんのブログは多くの人がアクセスされていて、
様々な感想が読めるので楽しませてもらっています。
他の人の感想を読み、なるほどこんなとらえ方があったのかと感心さられたり、う〜んと唸ってみたりしています。
僕のブログでは読み終わったものは、☆評価をしていますけど、
評価とかうんぬんではなくて、自分の肌にあって面白いと思ったか、
否かを表しているだけで、僕の観点で感じたことを素直に載せていきますので、これからも「こんな感じ方をするやつもいるんだ〜」程度に読んでいただければと思います。
私も『ナラタージュ』若い時に読みたかったです。「シンクロして泣けちゃった」とコメントしてくれた女性がいるのですが、とっても可愛らしいと思いました。そして羨ましかったです。
ところで、トラキチさん、TBありがとうございます。私の方は、TB送信履歴は残っているのにどこに行っちゃったのでしょうね(笑)。再挑戦してみました。今後ともよろしくお願い致します。
コメントありがとうございます。
この作品はかなり積極的にオススメしております。
私は普段はヒネクレ者ですが、本を読むときぐらいは純粋な気持ちに帰ろうと思っております(笑)
本の中では20歳に戻れるものね・・・
映画やビデオだとどうしても出演者を客観的に見てしまうのですが、本の場合は自分自身を投影することが出来るので世界が広がっていいかなと思います。
若い時に読んで恋人と語り合いたい恰好の作品だと思っております。
TB飛ばしたのですけれ、私の方が先に着いてしまったかな?(笑)
トラキチさんのレヴューを拝見して、純粋な方だな素敵だなと思いました。
私は自分の心の涸れにビックリしていますよ。
せっせと水をあげましょねー自分、て感じです。
コメントありがとございます。
私って結構、有名人なのかな?(笑)
お気軽に遊びに来てください。
こちらこそよろしくお願いします。
ちょっとビックリしました。トラキチさんのお名前はbk1の書評で存じ上げていましたが
まさか、私のブログをトラキチさんに読まれていたとは・・・。恐縮です。
どうぞよろしくお願いします。
TB&コメントありがとうございます。
この作品は特に普段小説をあまり読まない独身女性に読んでもらいたいなというのが私の願いです。
そう言う意味ではノミネートされている山本周五郎賞をゲット出来ればファンの裾野が広がるような気がしますね。
手にとってほしい一冊です。この小説から受けた衝撃は、とても大きかったです。
コメント&TBありがとうございます。
実は10点にしようか迷いました(^。^)
基本的に少し甘口に採点はしておりますが(わたしたちは評論家じゃないので少しでも作家さんの良い部分を未読の方にと思ってます)、この作品はドキッとさせられる何かがあるように感じ取りました。
また何か良い本がありましたらお気軽に遊びに来てください。
これからもよろしくお願いいたします。
9点という高評価のようですが、私もです!
友人に薦める気満々です。
この本を読まないのはもったいない!
こういう本と出逢えると、本当にうれしくなりますね。
『ナラタージュ』大プッシュさせていただいております(^。^)
今日の産経新聞の広告欄に5万部突破の記事がありました。
山本周五郎賞にもノミネート中、大ブレイクの予感がします。
是非手にとって欲しいなと思います。
>わかさん、こんばんは♪
コメントありがとうございました。
『ナラタージュ』評判いいですね。
ひとりでも多くの方が手にとってもらえるように応援したいと思っております。
『一瞬の光』是非手に取ってください。
『ナラタージュ』の三角関係に通じる部分があると思います。
私は近いうちに『僕の中の壊れた部分』読みますね。
これからもよろしく。
>ゆうきさん、はじめまして♪
コメントありがとうございます。
『ナラタージュ』素晴らしい本です。
私が若かったら好きな女性にプレゼントしたい本ですね。
TBありがとうございました。
私はこの「ナラタージュ」、あまりにも今の自分が置かれている状況と似すぎていたため、怖いくらいでした。
短い期間に何度も何度も読み返して、その度にたくさんの感情があふれてくる。
そんな小説に初めて出会いました。
本を読んで、涙が止まらなかったのも初めてでした。
ずっとずっと大切にしていきたいと思います。
ナラタージュ、読んだ時、ちょうど恋愛の苦しい部分に達していたので、もう本当に小説の中に閉じ込められるような、自分を自分で追い込むような気持ちがしました。
「生まれる森」を読んで、キクちゃんの言葉で、ようやく少し気持ちが楽になれました(笑)
島本さんの言葉の選び方がスキ。
白石さんの「僕の中の壊れていない部分」はいまいち共感できなかったのですが、「一瞬の光」興味出てきました^^
島本さんの作品は、文章のひとつひとつが丁寧で好感が持てます。読んでいると、あちこちに“いいなぁ…”と思うところがあっていいですよね。この「ナラタージュ」はまだ未読なので、トラキチさんの記事がとても参考になりました。
コメント&TBありがとうございます。
若い時にこういった本とめぐり合ってたら今の自分とは違った生き方ができてたのかもしれませんね(笑)
これからもよろしくお願いします。
>EKKOさん、こんにちは♪
たとえば、主人公が男性で年上の女性に恋してたらここまで純粋に読めなかったような気がします。
一途さが島本さんの文章からは熱く伝わってきました。
山本周五郎賞にノミネートされましたよ。
楽しみですね(^。^)
読み終えたあと、しばらくのあいだ、ぼーっとしてしまいました。登場人物たちの不器用だけど懸命に恋愛に向き合う姿がとても素敵でした。
とてもすばらしいレビューですね。
「ナラタージュ」は2度、3度と読むといい本なのかもしれないですね。
トラキチさんが紹介した本、いろいろ読んでみようと思います。
コメントありがとうございます。
最近、良いと思った作品は2回読むことが多いです。
3回目は数年後に読んでまた若返りたいなと思っております(^。^)
>205号室さん、こんばんは♪
コメントありがとうございます。
レビューお褒めいただきましてありがとうございます。
島本さん、また機会があれば読み返したいなと思っております。
追い続けたい作家がまたひとり増えました(笑)
すばらしいレビューですね!私も同意見です。
島本理生さんの今後の作品も楽しみ♪
それまでに、シルエットとリトル・バイ・リトルを読もうと思います。
若い人がここまで人間のことをわかっているって驚きでした。読む人の年齢や体験によって感じ方にずいぶん差が出る作品ですね。
作者の年齢が私の子どもたちくらいなのですが、私自身の若い頃を思い出しつつ読みました。
実は私この小説2回読みました。
2回めは葉山先生の気持ちが1回目よりよくわかったような気がします。
記憶に残る1冊だと言えそうですね。
>四季さん、こんばんは♪
お互いを尊重し合える結果となったのが読者として1番の満足感だと思います。
恋愛中誰もが感じる“冷静さを失う部分”が鮮やかに描かれていると思いました。
>もしこの作品を読まれてたとえばあざといとかつまらないと感じ取った人がいれば…
この部分、ほんとそうかもしれないなあと思いました。本当に「なるほど〜」です。
それと、立場によって、これほど読み方の変わる作品っていうのも、ちょっと珍しいかもしれないですね。
それから、先日は「文学作品の中の植物」にもTBでご参加いただきましたこと、改めてお礼申し上げます。
「ナラタージュ」は、私もいつまでも記憶に残る小説だと思います。