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評価:
宇江佐 真理
文藝春秋
¥ 570
(2003-04)
Amazonランキング:
4760位
Amazonおすすめ度:
舞台が急変していく3作目
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<読者が伊三次とお文との“サポーター宣言”をしたくなる憩いの1冊>
前作
『紫紺のつばめ』が“すれ違い”がテーマならば本作は“修復と訣別”がテーマと言えそうだ。
最初の“修復”は伊三次とお文、伊三次と不破との修復だと言える。
これに関してはほぼ順調に物語が推移するといってよいだろう。
既存の登場人物の過去におけるいきさつ、あるいは普段では見れない姿の発見などなどをまじえて。
冒頭の「因果堀」では増蔵の意外な過去が浮き彫りにされる。
本編においても新たな登場人物として掏りの直次郎が登場する。
作者の巧みなところは最初は違和感を与えつつも、次第に物語の中に溶け込ませていく点である。
そうすることにより、全体的に“伊三次ファミリー”を構築しているように見受けられる。
読者がより幸せな気分に浸れるような読書が出来るように作者も余念がないといっていいのであろう。
次の「ただ遠い空」ではちょっとわけあり女中のおこなが登場。弥八との祝言を控え、やめざるをえなくて気が気でないおみつの姿が微笑ましい。
「竹とんぼ、ひらりと飛べ」ではお文の実母らしい人が登場。
しかしお文は自分の素性を知らそうとしないのである。
気性が強いようだけど女らしくて可愛らしい点をあらためて読者に知らしめてくれた。
「護持院ヶ原」は作者もあとがきで語っているように異色の1編といえよう。
少しホラー色を交えて趣向を変えている。まるで男性作家が書いた作品のようだ。
不破の男らしさに意外な一面を見たと感じられた方も多いんじゃないであろうか。