2004
09.05
Sun
『センセイの鞄』 川上弘美 (文春文庫)
post time: 10:48, category: 川上弘美, author: トラキチ
川上 弘美 / 文藝春秋(2004/09/03)
Amazonランキング:3,699位
Amazonおすすめ度:
誰にでも思い入れの強い作品というものがあるであろうが、私にとってはこの作品はとっても思い入れの強い一冊である。
読書好きのあいだでは読まれた方の方が多いと思えるが、敢えて文庫化に伴い再読してみた・・・
何回読み返しても心に響く名作である。
ツキコさんと
センセイ。
まさに理想のカップルである。
二人がお互いをいたわっている姿に胸を打たれない読者はいないはずだ。
きっと私たち読者が純粋に本を愛するような感覚で二人は愛し合っているのであろう。
愛という言葉を使ったが、本作においては恋という言葉の方がふさわしいかな。
私たちが忘れかけつつあるあの頃の人に恋する気持ち(胸が締め付けられたりあるいは胸がキューンとなったり)を体感出来ることが出来る作品である。
文庫本で約270ページの作品であるが、いろんなシーンが脳裡に焼き付いて離れない。
よくわからないや。
わたしはつぶやいて、センセイの家を後にした。
もう、どうでもいいや。恋情とかなんとか。どっちでもいいや。
ほんとうに、どちらでもよかった。センセイが元気でいてくれれば、よかった。
もう、いい。もう、センセイに、何かを望むのはやめる。そう思いながら、わたしは川沿いの道を歩いた。
ツキコという名前は“月並み”という言葉から名づけたのかなと私なりに解釈している。
それだけ月並みな事柄が多い。
きっと大勢の読者の方がいろんな過去の想い出があるはずだ。
本作の読み方も十人十色である。
過去の自分の恋愛と比べる人もいるだろう。
現在の自分の周りの人に対する接し方を考え直すのも良い。
私は、本作に出てくるような居酒屋で女性と一緒にきんぴら蓮根をつまみにして一杯飲みながら本作について語り合いたいなと思った。
それが私の理想の恋愛像なのかな。
でも私はビールをついでもらいますが(苦笑)
遠いようなできごとだ。センセイと過ごした日々は、あわあわと、そして色濃く、流れた。
センセイと再会してから、二年。センセイ言うところの「正式なおつきあい」を始めてからは、三年。それだけの時間を、共に過ごした。
あのころから、まだ少ししかたっていないのに。
淡々と語られる川上さんの独特な文章。
しかしながら読者にもたらす感動はとっても深遠である。
未読の方は必ずツキコさんやセンセイの魅力に酔いしれるはずである。
本作を読んでツキコさんやセンセイとともに過ごせた時間を強く感謝しなければならない気持ちで一杯である。そういう読み方がこの作品の本来の趣旨であろうと信じたい。
評価9点 オススメ
『パレード』は読んでないのですよ。
先ほどbk1で検索したところ、川上さんって結構たくさん出版されてますね。
まずは『古道具中野商店』ですね(笑)
川上さんの作品としては一番、実際にありそうな話かも?ですが、やっぱり不思議な雰囲気がただよっていて、いいですよねぇ。
「パレード」も読みましたか?
TB&コメントありがとうございます。
こちらこそよろしくお願いします。
私も川上さんの作品は本作しか読んでないのですが(苦笑)・・・
素晴らしすぎて他を読めばがっかりするのかなと少し構えてます。
是非お読みください。
私の兄がこの作者のファンなので、薦められた記憶があります。
私の普段読む本とは毛色が違うので、ちょっと敬遠していました。
今度兄から借りて読んでみることにします。でも、積ん読本がたくさんあるからなぁ